ソープ業界は過酷極まりない”業”の強い世界です。
一般人の世界とくらべると「喜び」も「悲しみ」も数倍強く、そこでは今日も人知れず人間模様が繰り広げられています。
たんなる性のはけ口だけでなく、今の社会で薄れてしまった人情を呼び起こされるような話も星の数ほど存在します。
長年ソープ通いをしてきた、往年のソープファン達に尋ねると、一つや二つそういった「心温まるエピソード」を経験しているようです。
●55歳/自営業/Aさん
『東京吉原に通い続けて30年の男性のエピソード・・・』
まだ、勤めていた会社で下積みをしていたAさんは、先輩に連れられて行った吉原ソープの常連になりました。
Aさんが最初に登楼したソープ店に、自分の歳と同じくらいのスタッフがいて、彼はソープ店に入社したばかり。
いつも先輩たちの使いっ走りをさせられて、どなられこずかれながら、辛い修行を続けていたそうです。
Aさんは年齢も近く、自分の会社での立場とオーバーラップしてしまうその従業員に親近感が湧き、いつも優しい言葉をかけていました。
その従業員も他の客と違う愛情を感じるような対応をしてくれるAさんとすぐに仲良くなり、お互いの苦労話などもよくしたそうです。
Aさんはその後、独立をするために7年の間吉原から遠のき、会社が軌道に乗ったことを期に、またそのソープ店を尋ねたのです。
すると、そこにあの従業員の姿はなく「やっぱり辛くて辞めちゃったか・・」と残念に思いながら待合室にいると、奥からドタドタと音が聞こえカーテンが開きました。
そしてそこに立っていたのは、あの下積みの下っ端だった従業員だったのです。
彼はアルマーニのスーツにロレックス・・・顔立ちは間違いなく彼なのですが、その佇まいは完全に「店長そのもの」だったのです。
彼は目に涙を浮かべながら、Aさんの手をとり、
「いやあ!もう来てくれないかと思いましたよ!おかげ様で今はこの店を任せられています!これもAさんの励ましのお陰ですよ!」
と、他のお客そっちのけでAさんとの再会に酔いしれたそうです。
Aさんも自分の近況を伝えると二人は昔話に花を咲かせ、予約嬢を放っていつまでも話し込んでいたそうです。
—-「落ちるのも上がるのも早い」ソープ業界にはこういったサクセス・ストーリーがあるのです。
●49歳/会社員/Bさん
『金津園で体験したあるソープ嬢の話・・』
愛知県のとある企業に勤めていたBさんは、岐阜県金津園ソープ街の常連でした。
外見、性格ともに相性のよかった高級ソープランドのN嬢がお気に入りで、高収入だったこともあり、週一回のペースで半年ほど通ったそうです。
そんなおり、あの「リーマンショック騒動」が起こり、Bさんの会社も大きな損害を出してしまいました。
当然のように会社は「リストラの嵐」が吹き荒れ、Bさんも弾かれる人材に選ばれてしまったのです。
マンション、車などを手放しても、残ったのは莫大なローンの山・・・再就職先もうまく見つけることができずに、ついには奥さんと離婚するまでに事態は混乱しました。
突然のリストラの前に、お気に入りのN嬢は、Bさんの誕生日にブランドものの財布をプレゼントする約束をしていました。
もちろん、それどころではないBさんは、予約をすっぽかし、それ以来ソープランドには行かなかったのです。
2年後、独身になったBさんは一念発起して小さな会社に再就職し、やっとまともな生活がおくれるようになりました。
そしてその時にあの”N嬢”のことを思い出したのです。
インターネットで店舗を調べると、2年前と変わらぬ姿で在籍しているのを見つけ、居ても立ってもいれなくなり、叱責されるのを覚悟で予約を入れました。
そしてついに、当日・・・こみ上げる喜びと不安を胸に呼び出しの声を聞き、カーテンが開くと、あのなつかしいN嬢が満面の笑顔で立っていました。
N嬢はBさんを咎めるでもなく「いらっしゃい」とポツリと言うと、腕を組んで個室に案内されました。
Bさんを残して、奥の控室に行って戻ったN嬢は、以前渡しそびれた誕生日プレゼントを持って涙していたのです。
「淋しかったんだから」というN嬢の表情を見たBさんは強く彼女を抱きしめたのでした。
その日、Bさんはサービスを受けませんでした。
2年前に起きたことをN嬢に話して予約をすっぽかしたことを詫び、感涙に耽ったのだそうです。
街の中心に存在しながらも、世間から遠く離れたソープ街には、お伽話のような情感のあるエピソードにあふれています。
そこで繰り広げられる叙情にあふれた人間劇を聴くと、けっして「乱れた性の世界」などと簡単に吐き捨てられない何かを感じるのです。