AZITO V.I.P

芹澤 きこ

芹澤 きこ

(23)

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🦋妄想日記🦋

12/19 18:54

🦋妄想日記🦋

 

短編『帰り道の途中で』

 

 

夕方の空は、いつもより少し赤かった。

部活の終わった校舎から出て、並んで歩く帰り道。

それは小学生の頃から、ずっと変わらない道だった。

 

「今日の数学さ、先生さ…」

 

他愛もない話をしながら、彼女は隣を歩いている。

肩が触れそうで触れない距離。

それが、最近やけに気になるようになった。

 

幼馴染だ。
昔は平気で肩を組んだし、名前も呼び捨てだった。

なのに今は、
目が合うだけで胸が少し苦しくなる。

 

彼女が急に黙った。

足取りが少し遅くなって、俺はつられて立ち止まる。

 

「どうした?」

 

そう聞いた声が、自分でも驚くほど硬かった。

 

彼女は何も言わずに、俺の制服の袖をつかんだ。

夕焼けの光の中で、顔が少し赤く見える。

 

「……あのさ」

 

言いかけて、やめる。

その沈黙が、やけに長く感じた。

 

次の瞬間だった。

 

ふっと距離が詰まって、

彼女の額が俺の胸に軽くぶつかる。

驚いて息を吸った、その瞬間。

 

柔らかい感触が、唇に触れた。

 

一瞬。

本当に、一瞬だった。

 

すぐに彼女は離れて、目を見開いて固まる。

俺も、何も言えないまま立ち尽くしていた。

 

心臓の音が、耳の奥でうるさい。

 

「……ごめん」

 

小さな声。

でも、謝っている顔じゃなかった。

 

夕焼けの中で、彼女は視線を逸らしながら、

それでも少しだけ笑った。

 

「なんか……言わなきゃって思って。でも、言葉出てこなくて」

 

俺は、やっと息を吐いた。

頭が真っ白で、うまく考えられない。

 

でも、ひとつだけはっきりしていた。

 

この道は、もう前と同じじゃない。

 

「……帰ろうか」

 

そう言うと、彼女は小さくうなずいた。

また並んで歩き出す。
さっきより、ほんの少しだけ近い距離で。

 

唇の感触は、もうないはずなのに。

なぜか、胸の奥にまだ残っていた。

 

告白は、まだ先でいい。

たぶん、次の帰り道で。

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